BAUS MAGAZINE

バウスマガジン

2024.07.31

インテリア

プロに聞くインテリアづくりのヒント 「バウス府中」

「おしゃれな部屋にしたい」「リラックスできる空間がほしい」など、住まいのインテリアには、人それぞれ、さまざまな理想があると思います。しかし、実際にそんな空間を実現するのは、本当に難しいですよね。「何から始めたらいいのかわからない」「ちぐはぐな印象になってしまう」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
今回は「バウス府中」モデルルームのインテリアコーディネートを担当された株式会社GOOD PLACEの北田知子様と宮永法子様にお話を伺い、プロの視点から、一般の方でも参考にできるアドバイスをいただきました。

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  • コーディネートの軸になるのは
    「テーマ」と「サイズ感」

    お二人からのアドバイスによれば、お部屋のインテリアをコーディネートするときには、まず自分の好きなインテリアの写真を集めることから始めるとよいそうです。具体的には、インターネットや雑誌などでいろいろな写真を見て、気に入ったものを収集します。すべてが好きでなくても、「壁紙が好き」「椅子の形が好き」など、部分的にでも構いません。枚数が増えていくと、共通する「自分が好きなテイストや色合い」を、インテリアを考えていく際の「テーマ」としていくとよいでしょう。
    「テーマ」が決まったら、家具・アイテム選びに入っていくわけですが、ここで重要なのが「サイズ感」です。ショップではちょうどよいサイズに見えた家具・アイテムが、実際に自宅に置いてみると大きすぎた…という失敗がよくあるため、あらかじめ自宅のさまざまな場所を採寸し、うまくフィットするかどうかをイメージしながら選ぶようにするとよいでしょう。
    その際には、「人の動き」を意識することも大事です。インテリアは単に美しく置かれてさえいればよいというものではなく、実際に生活する上で本当に使いやすいか、生活しやすいサイズ感や形状であるか、ということにも留意して選ぶことが重要です。

  • 空間をおしゃれに演出するには
    「色のトーン」を合わせるのがポイント

    「テーマ」に基づいて家具・アイテムを選んでいくときには、「色のトーン」(明るさ・鮮やかさ・色合い)を揃えることを意識するとインテリアの印象がまとまりやすくなります。例えば、空間をベージュで統一しようと思っても、黄色みの強いベージュ、赤みの強いベージュ、青みの強いベージュなど、さまざまなトーンがあります。トーンが異なるベージュを組み合わせてしまうと、収まりの悪い印象になってしまいます。逆に、異なる色でもトーンを揃えると、きれいにまとまりやすくなります。
    「色のトーン」を考えるときに気をつけたほうがよいことが、床(フローリング)の色です。室内で大きな面積を占める床(フローリング)の色に、インテリア全体のトーンを合わせると空間デザインとしてまとまりやすくなります。床が白に近いような明るい色だった場合、比較的どんな色でもなじみやすいですね。一方、例えばダークブラウンや、色味のあるベージュ系のフローリングだった場合には、その色にトーンを合わせていくとまとまりやすくなりますよ。

  • インテリアでもっとも大事なのは
    「心身の心地よさ」

    今回のインタビューでは、北田様と宮永様にプロの視点からさまざまなアドバイスをいただきました。その中でも印象的だったのが、「インテリアは、自分や家族が心地よいと思うかどうかが一番大事」とおっしゃっていたことです。
    自分にとって、家族にとって、心身ともに心地よくいられる空間とはどのようなものでしょうか。自分が好きなデザインに囲まれたいというのも「心地よさ」の1つですし、ソファーや椅子の座り心地、「こういうスペースがあると自分が過ごしやすい」なども含まれます。それを意識して家具・アイテムを選んだり、レイアウトを決めたりすることが大事です。
    おしゃれなスタイルや流行のデザインを参考にするのはよいことですが、決まった型にはめようとすると失敗することも。写真やモデルルームなどを見て、「素敵だな」と思ったとしても、それを自分や家族に置き換えたとき、「本当にそのような生活がしたいのか」「自分たちはどのように暮らしたいのか」「どこにいる時間が長いのか」が、一番大事にしてほしいポイントだそうです。

  • コンテストで部門最優秀賞を受賞した
    「バウス府中」モデルルーム

    さて、今回お話を伺った北田様と宮永様がインテリアコーディネートをご担当された「バウス府中」モデルルームは、本年1月、「令和5年度住まいのインテリアコーディネーションコンテスト※スタイリング部門 部門最優秀賞」を受賞しました。受賞作品名は「Timeless Japandi(タイムレス・ジャパンディ)」。和のエッセンスと北欧のインテリアが融合したコーディネートです。以下の記事では、お二人へのインタビューの一部を抜粋しています。プロならではの高度な内容ではありますが、参考にできる点も少なからずありそうです。
    ※主催:公益法人インテリア産業協会、後援:経済産業省

    ―コンセプトである「Japandi」について、あらためて教えてください。
    宮永様:日本の和に見られる間や自然と融合する侘び寂びに基づいたデザインと、北欧のシンプルで機能的なデザインを融合したものです。「バウス府中」の物件コンセプトである「歴史と現代」に合わせて「テーマ」を決定しました。府中という立地や、建物の外観が和の雰囲気であること、近くに大國魂神社があることなどを意識して、インテリアデザインを検討しました。また、バウス府中の特徴的な「効率の良い間取り」に、「Japandi」のシンプルで機能的なデザインがマッチすると考えました。

  • 組み合わせの1つ1つが
    インテリアを構成する

    ―今回のインテリアコーディネートで、重視されたポイントを教えてください。
    宮永様:コーディネートとは、「全体の構成を調整しながらアイテムを組み合わせる」ことです。アイテム自体のデザインもありますが、例えば、同じテーブルでも組み合わせる椅子により雰囲気が変わります。さまざまなアイテムの積み重ねがインテリアを構成します。
    畳の生活をベースに発展してきた和のインテリアデザインの場合、重心の低いアイテムでまとめることが多くあります。そのため、今回の家具のセレクトも、シンプルで重心が低いものを意識しました。足の短いソファーや、重量感のある石調のリビングテーブルは重心の低さでチョイスし、一方でダイニングテーブルは軽やかな印象のガラスのテーブルを選定して空間全体のバランスをとっています。
    「Japandi」は和を感じさせつつも、あくまでも北欧デザインとミックスされたスタイルです。物件コンセプトに合わせて、和風に偏りすぎないようモダンなデザインのアイテムを組み合わせ、全体的に極力シンプルにまとめました。

  • さまざまな素材のミックスで
    単調にならないよう工夫

    ―配色や素材はどのように選ばれましたか。
    宮永様:全体的にベージュで、派手な色を使わずに大地を感じさせるような柔らかいトーンでまとめて、アクセントでブラックを入れて引き締めるというバランスになっています。柄ものはそれほど使わず、石目調の素材や、砂岩調の内装材を使い、クロスやタイルも凹凸感やマットな質感など、さまざまな素材をミックスさせることで、単調にならないようリズムを作っています。素材がさまざまでも、色のトーンを揃えれば、まとまりやすくなります。カーテンやクッションなどの布を使ったインテリアアイテムも質感のあるナチュラルなものを選んで組み合わせました。
    特にこだわったのは壁面です。壁面は面積が広いので、木パネルとタイルを貼り分けました。格子を思わせるような和のエッセンスとして木パネルを使いたかったのですが、とはいえ、あまりにも和風過ぎないようにというところで、色味や質感、ラインの細さや厚み感にもこだわりました。

  • 私たちにも真似しやすい
    プロのテクニック

    ―一般の人でも取り入れやすいテクニックにはどんなものがありますか。
    北田様:照明で遊ぶのはお勧めです。ダイニングの上にペンダントライトを吊るすのは、分かりやすく雰囲気が出ます。照度がそれほど高くないものも中にはありますが、デザインが気に入ったのであれば、スポットライトなどで補ってあげればよいと思います。
    ―ダイニングの照明が特徴的ですね。
    宮永様:この照明は、和紙の提灯のようなものですが、実はこれ、日本のものではないんです。&Traditionというデンマークのブランドの商品です。
    北田様:ハイメ・アジョンというスペインのアーティストの作品です。
    宮永様:和を感じさせつつもモダンな印象が、今回のテーマにぴったりだと思いました。

    ―モデルルームではところどころに黒の部分が見られますが、黒の効果的な使い方について教えてください。
    北田様:今回のモデルルームでは、黒を面ではなく線で使っています。
    宮永様:黒が入ると、空間が引き締まり、メリハリがでるのでわかりやすく素敵に見えますね。大きな面で取り入れるよりは、例えばテーブルの脚が黒とか、そこに合わせて棚も少し黒とか、少しずつ取り入れるとよいのではないでしょうか。全部が黒の家具を選ぶと、他とバランスを取るのが難しくなると思います。

  • 「人の動き」を意識しつつ
    空間を広く見せる家具レイアウト

    ―リビング/ダイニングで注力されたポイントを教えてください。
    宮永様:デザインだけなく家具レイアウトも、生活の動線確保や暮らしのご提案という点で大事だと考えています。今回の物件は、回遊性のある間取りになっています。生活動線が考慮されていて、効率的に動きやすいという点がポイントです。
    動線の中にダイニングテーブルやソファーを置いているので、邪魔にならないものにしたい。とはいえ、コンパクト過ぎても居心地が悪くなるため、スッキリ見えつつも小さすぎない、リラックスできるようなものを選び、バランスをみてレイアウトしました。また、ダイニングテーブルの片側に、椅子ではなくベンチを置いていますが、背もたれがない分スペースを節約でき、スムーズな動線が確保できています。
    宮永様:ガラスのテーブルは、ダイニングを広く見せるためにセレクトしました。
    軽やかな印象にまとめたいとき、ガラスのテーブルには非常に有効です。ただ、クリアガラスの天板や細い脚のものでは、重心の低さで選定したソファーやリビングテーブルとのバランスにおいて、軽くなりすぎてしまうと思い、あえてブラックガラスの天板に、ダークな木製の脚のテーブルを選定しました。ガラスのテーブル1つとってもさまざまな商品がある中で、全体のバランスで決めていく、というのが大切だと思います。

  • アイテムの組み合わせと工夫で
    空間の印象をレベルアップ

    北田様:リビングの隣の洋室は、デザイナーの宮永さんらしさが凝縮された空間だと思います。有名なYチェア※があり、結構お値段がするものですが、それ以外のマガジンラックやサイドテーブルなどは、お手頃なものを組み合わせています。また、モデルルームの家具は特注の造り付け家具のケースも多くありますが、このデスクとシェルフは既製品で、お値段もそこまで高くはありません。主役級のアイテムを1つ置くだけで、一気に空間がレベルアップして見えますので、ぜひチャレンジしてみてください。
    ※Yチェア:1950年、北欧家具の巨匠ハンス・J・ウェグナーによってデザインされ、今でも世界中で愛用されている椅子です。

    インテリアでもっとも大事なのは、自分と家族の「心身の心地よさ」―お二人はインタビューの最後にそう語ってくださいました。デザイナーの宮永さんも、ご自宅ではご夫婦それぞれが座りやすいソファーを選び、デザインの異なるものを2つ置いているそうです。「別のソファーを置いていたこともあるのですが、自分たちにとっての居心地のよさを優先したら、結局そのスタイルに落ち着きました。」。

    プロのアドバイスをヒントに「心地よい」インテリアをコーディネートできれば、毎日を自分らしく過ごすことができそうですね。

  • 株式会社GOOD PLACE提携デザイナー 宮永 法子

    大学在学時にインテリアの仕事を志し、インテリアデザインの専門学校を卒業。
    インテリア会社にて、主に経営者や大使館等のハイエンド顧客の個人邸、モデルルームのインテリアコーディネートに従事。
    2015年よりフリーランスに転身し、現在は主にマンション・戸建てモデルルームのコーディネートに携わる。


    株式会社GOOD PLACE 北田 知子

    新築分譲マンション契約者様のインテリアとりまとめ業務を経て、モデルルームのコーディネーション業務に従事。
    バウス府中ではモデルルームのディレクションと専有部のベースカラーのコーディネートを担当。
    2024年4月からオフィスインテリアのデザイン設計部署に所属している。