バウスマガジン
2024.05.31
インテリア
「香り」をインテリアの一部として意識したことはありますか?
インテリアと聞くと、まず家具や装飾、照明などを想像される方が多いと思います。しかし、英語の「interior」の意味は「内面」「内側」であるため、「香り」もインテリアを構成する要素のひとつだと考えることができます。
「香り」は目に見えるものではありませんが、その有無や種類により、空間の印象が大きく変わります。在宅ワークなどの機会が増えた昨今では、「おうち時間」を豊かにするためのさまざまな工夫が生まれています。その一案として、今回は、ご自宅の空間に「香りを飾る」方法やコツ、メリットをご紹介していきます。
近年、働き方改革やテレワークの普及により、自宅に求められる役割が多様化しつつあります。「おうち時間」を充実させたいというニーズが高まっており、そのためのひとつの方法として、あらためてルームフレグランスが注目されています。関連市場が継続的に成長しており、香水などを製造している化粧品会社などの参入も相次いでいます。
これらのことから、「フレグランス」のイメージは、かつての「香水のように身につけるもの」から、「空間を演出するもの」「気分を変えるもの」などへ広がりつつあるといえるでしょう。
自宅で仕事をすることが増えると、ON/OFFの気持ちの切り替えがすっきりとできず、終業後の時間でもリラックスして過ごしにくいと感じる方がいらっしゃるのではないでしょうか。そんなときには、「香り」を活用して、ご自宅の雰囲気を変えてみるのもおすすめです。
例えば、音楽を流すことによりその場の雰囲気が変わるように、「香り」を漂わせることによっても、空間の印象は大きく変化します。ONとOFFで香りを切り替えることにより、気持ちも切り替えることができるかもしれません。
また、「香り」の中には、「リラックス」「ストレス・不安感の軽減」「集中力向上」といった、さまざまな効能を持つものがあります。気分転換の方法として、生活にメリハリをつける用途でも香りは重宝されます。
嗅覚は人間の五感の中で唯一、脳の「大脳辺縁系(好き嫌いの感情や記憶を司る領域)」に直接情報を伝えます。そのため、人は好きな香りを嗅ぐことにより、速やかに心を落ち着かせたり、高揚させたりすることができます。
特定の香りが、それと結び付く記憶や感情を呼び起こす現象は「プルースト効果」と呼ばれています。マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』の中で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸したときに、その香りで幼少時代を思い出す場面があることから名づけられました。
この「プルースト効果」を意識することで、ルームフレグランスの効果は、より大きなものになります。
久しぶりに祖父母の家の香りを嗅ぐと懐かしさを感じたり、街中で感じた香水の香りで忘れていた人を思い出したり…おそらくほとんどの人は、「プルースト効果」を経験したことがあるのではないでしょうか。
「プルースト効果」は、ご自宅で過ごす時間を快適にしたり、ご自宅を訪問される方からの印象を良くしたりすることに活用できます。
例えば、無垢材のインテリアにヒノキの香りを組み合わせた部屋では、まるで森の中のログハウスにいるようにリラックスできます。ご家族で南国に旅行したことがある方は、ココナッツの香りを飾ることによって、旅の思い出に浸れるかもしれません。
香り製品の中でも、植物から抽出した素材のみを原料とする「エッセンシャルオイル(精油)」には、天然香料の持つさまざまな効能が期待できるといわれています。
ここでは、香りで「自分らしさ」を演出するという観点から、期待できる効能ごとに、おすすめの「香り」と「置き場所」をご紹介していきます。
精油を使ったルームフレグランスの製品には、さまざまな種類があります。
「アロマランプ」や「電気式ディフューザー」は、電源が使える比較的広い空間で、強く長く芳香できます。
「アロマキャンドル」や「お香」にも香りによる効果が期待できますが、どちらも火を灯すことが一般的な製品なので、火事ややけどなどへの注意が必要です。「アロマキャンドル」は、火を使わずに香らせることができる「キャンドルウォーマー」と併せて使えば、比較的安全性が高まります。お香については、蓋つきの香炉を使用することで、直接火に触れてしまうリスクが軽減されます。
「ルームスプレー」の香りは長続きしませんが、空間をすみやかにすぐに香りを漂わせたいときや、特定の効果を求めて香らせるときに便利なので、トイレや食事の後などにおすすめです。「アロマストーン」「リードディフューザー」「ポプリ」は、電源が取れない空間や、就寝中など火を使えないときに向いています。
季節に合わせて室内の花や装飾を変えるように、「香り」で季節を感じさせることもできます。
【春】
桜の咲く春の季節は、お花や若葉の息吹を感じられる、華やかでフレッシュな香りがおすすめです。フローラル系やシトラス系を探してみてください。
【夏】
気温が上がる夏の季節には、クリーンなイメージで清涼感を感じられるミントやユーカリの香りがおすすめです。虫が増える季節ですので、防虫作用のあるミントやレモングラス、ハーブの香りなどもよいですね。
【秋】
徐々に日が短くなり気温も下がる秋は、寂しさや静けさを感じる季節です。温かみや安心を感じられるオレンジやウッディ系の香りを漂わせながら、読書などはいかがでしょうか。
【冬】
寒くなり、おうち時間が長くなる冬には、節目ごとに香りに変化をつけるのはいかがでしょうか。クリスマスの飾りにオレンジやスパイス系の香りを合わせたり、モミの木の香りのするポプリを飾ったりするのがおすすめです。お正月には、和を感じさせるゆずやヒノキ、香木などの温かく重厚感のある香りを飾るとよいでしょう。
<嗅覚疲労について>
好きな香りであっても、同じ空間で嗅ぎ続けていると鼻が慣れてしまいます。その結果、香りがわからなくなってしまう現象を、「嗅覚疲労」といいます。嗅覚疲労を予防もしくは解消するためには、ときどき部屋の空気を入れ替えたり、違う香りを楽しんだりしてみてください。
<香りの拡散性と飾り方>
香りの中には、拡散しやすいもの(シトラス系、ユーカリ、ミントなど)と、拡散しにくいが長く持続するもの(ムスク、香木など)があります。
香りの持続性は飾り方によっても異なります。ムスクや香木の香りを「アロマストーン」などの方法で芳香すると、より長く香りが持続するため、季節ごとに香りを変えて楽しみたい方には不向きな組み合わせといえるでしょう。いろいろな香りを楽しみたい方は、香りの切り替えがしやすい「電気式ディフューザー」や「アロマランプ」などを使用してみてください。
<強い香りをつけたくないとき>
自然と香りが揮発していく過程で芳香が楽しめるものを使用してみてください。必要なときに必要なだけ使える「ルームスプレー」や、身近な範囲のみで香る「アロマストーン」「リードディフューザー」「ポプリ」などがおすすめです。
小さなお子さまやペットのいるご家庭では、香りを強くしすぎず、様子を見ながら慎重に使用するようにしてください。小さなお子様やペットは香りの代謝に時間がかかるため、体への負担が大きかったり、アレルギーを起こしたりする可能性があります。ペットは人間よりも嗅覚が優れているため、神経に作用するタイプの精油の場合、効果が強く発揮され、異常行動を引き起こす可能性があります。また、点灯中のキャンドルを倒したり、使用後のアロマランプを口に入れたりしないよう、お子様の手の届かないところで使用することも大切です。
<お手入れ方法>
精油皿に精油を数滴垂らして使う製品は、使い終えた後に精油皿をエタノールでふき取るお手入れが一般的です。
電気式ディフューザーは、製品によってお手入れの方法が異なります。お手入れをせずに異なる香りのオイルに変更すると、香りが混ざり合って不快なものになってしまうことがあるので、各製品の説明書を確認し、定期的にお手入れをしましょう。
リードディフューザーやスプレーなどは、お手入れの必要がありません。ただ、溶剤がエタノールである場合があるので、使いきれずに捨てるときには火気に十分ご注意ください。
ここまで、一般論として香りの種類や効能、おすすめの置き場所などをご紹介してきましたが、実は最適な香りや飾り方は人それぞれ異なります。例えば、リラックス効果を持つといわれるラベンダーの香りも、苦手な人にとっては「リラックスできる香り」ではありませんよね。
したがって、機能面での「香りの効果」はあくまでも付加的なものと考え、自分と家族が落ち着く香り、元気になる香りを選ぶことがあなたにとっての「正解」といえるかもしれません。
香りは形がなく目にも見えませんが、インテリアスタイルや四季に応じて飾ることで、自分らしいおしゃれな空間を演出し、生活をより豊かにすることができるものだと思います。空間全体の演出に、ぜひ「香り」を活用してみてください。