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バウスマガジン

2024.06.28

ファイナンス

理想の住まいを
購入するためのお金の話

住宅は生涯にわたって暮らしを支え続ける基盤ですから、できるだけ理想に近い住まいを手に入れたいもの。しかし人生の中で大きな買い物でもあり、「いくらまでの住宅なら買えるのか」「将来お金が足りなくなったらどうしよう」といったお金に関する不安や迷いを抱えることも多いのではないでしょうか。
理想の住まいを手に入れるために知っておきたい「家と資金の話」を、連載記事でご紹介する本シリーズ第2回のテーマは、理想の住まいを購入するための資金計画です。理想の住まいを手に入れ、自分らしい人生を描いていくために必要なお金について考えていきましょう。

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  • マイホーム購入には資金計画が大切

    モデルルームや物件見学で、「こんな家に住みたいな」と思える住まいに出会ったのに、その価格が予算を超えてしまっている、というのはよくあることです。
    あらかじめ決めていた予算で無理をしないことも大切ですが、住宅は毎日の暮らしを支え、人生を共にする大切な存在です。人生の三大出費のひとつに数えられる大きな支出でもあるので、後悔しない選択をしたいものです。
    多くの場合、住宅ローンの返済は30年以上に及ぶので、将来にわたって返済を続けられる額に収める必要があります。一般的には、住宅ローン返済は収入の20~30%以内に、などといわれますが、それらはひとつの目安でしかありません。たとえば複数の子どもを中学受験させたいと考える家庭と、高校までは公立と決めている一人っ子家庭、夫婦ふたり世帯や単身世帯では、住宅に充てられる金額は大きく異なるからです。
    予算を引き上げて欲しい物件を手に入れてよいのか、どのぐらいの返済額であれば払い続けられるかを把握するには、長期的な資金計画を立てることが重要です。長期的なライフプランをシミュレーションして必要なお金を把握し、住宅にどこまでお金を使ってよいのかをプランニングすることで、お金の不安を軽減できます。

  • ライフプランを作れば、
    人生に必要なお金がわかる

    将来の収入や支出がいくらになるかを正確に予測することはできませんが、今ある情報だけでも大まかな計画を立て、収支を把握することは可能です。そのためにぜひ作ってほしいのが、ライフプラン表です。
    ライフプラン表とは、今後の人生で予想されるライフイベントとそれに必要になるお金を具体的に書き出して、思い描く人生を実現するための計画表のようなものです。キャッシュフロー表やライフプランシミュレーションなどと呼ばれることもあります。
    今後の人生でいつ、どれぐらいのお金が必要になるのか、今の生活を続けて老後の資金は足りるのかということがわかるため、足りない場合の対策も検討しやすくなります。

  • 家計の専門家であるファイナンシャルプランナーと一緒に作成するのが理想ではありますが、専門家の力を借りなくても、家族の年齢や収入、子どもの進学先や一時的な支出の予定などを入力することで簡易的なライフプラン表を完成させられるテンプレートやアプリがインターネット上にたくさん公開されているので、まずはこうしたサービスを利用してみるのもよいでしょう。もちろんエクセルなどで自作することもできます。
    多くの場合、住宅ローンの返済額は現状の家賃と同水準を目安に考えますが、実際はもっと払える場合もあれば、そうではない場合もあります。ライフプラン表をなるべく早い段階でつくることで家計の改善策を打てるようになるため、いざというときにお金が足りないという事態を防ぐことにもつながります。貯蓄や投資を始めたり、あるいはその額を増やしたりするモチベーションもグンとアップするはずです。

  • マイホーム購入は、
    お金について話し合う絶好のチャンス

    本来であれば結婚するときに夫婦で話し合いライフプラン表を作っておくことが理想ではありますが、現実には多くのご夫婦はこうした作業に着手しないまま日々が過ぎてしまっています。こうした共働き夫婦のなかには、互いの収入額も知らず、それぞれが自由にお金を使っているケースも見られます。
    住宅購入のタイミングは、将来のお金と具体的な人生設計について考える絶好のチャンスです。お金のことだけでなく、どんな家や地域に住みたいか、子どもにどんな教育を受けさせたいか、退職後はどんな生活をしたいかといったことを夫婦で話し合い、考えを共有する良い機会になります。パートナーに対していきなり、「ライフプラン表をつくって家計を管理しましょう」と持ちかけると抵抗感を示されることもあるでしょうが、人生最大の買い物となる住宅購入のタイミングであればその必要性を納得してもらいやすく、スムーズに話し合いをスタートできるかもしれません。また、単身者の場合は老後や病気になったときの備えはより手厚くする必要があるので、いずれにしても住宅購入を機に家計を管理することは大切です。

  • 家計簿は続けられなくても大丈夫!

    子どもがいる家庭の場合は、教育費はどのタイミングでどれぐらい必要になるかも、事前に調べることでおおよその額は把握できます。その時になって慌てないための準備をしておきたいものです。
    ライフプラン表を作成する際は、月々の生活費がいくらかかっているかという情報が必要です。これには家計簿をつけるのが理想ではありますが、毎月継続しなくても大丈夫です。1か月だけでよいのでレシートやクレジットカードなどの明細を保管しておき、食費、住居費、水道光熱費、美容被服費、趣味レジャー、教育費といったざっくりした費目に分けて、いくらの支出があるかを確認しましょう。この場合、年末年始など一時的な支出が増える時期を避け、通常運転の月を選ぶとよいでしょう。

  • “運命の住まい”が
    予算を上回っていたらどうする?

    ライフプラン表の作成は課題の発見にはつながりますが、すべての問題を解決できるわけではありません。欲しい物件と買える物件の間に大きな開きがあることがわかって、ガッカリすることもあるかもしれません。こうしたケースでは、住居面積や地域などの立地条件などを見直して予算内で再検討する人もいれば、あきらめきれずに予算の見直しをする人もいます。
    住宅は予算内に収めるのが基本ではありますが、必ずしもあきらめなければならないわけではありません。中には、予算をアップさせるために住宅購入の時期を遅らせて貯蓄を増やそうとする人もいますが、賃貸に住んで家賃を払いながら頭金を貯めるのはあまり効率が良いとはいえません。予算を超えた物件であっても、ライフプラン表を作成し、住宅以外に回す支出を抑えたり、収入を増やしたりすることで、予算をアップさせることは可能です。
    たとえば、毎月の家計を見直して支出を抑える、家族旅行といったイベントや車の買い替える頻度を減らす、家庭の方針によって大きく異なる教育費を見直すなどすることで、別の支出に充てられるお金が大きく変わるので、あきらめる前に一度検討してみる価値はあるでしょう。
    また、住宅購入では親の援助を受ける場合に、贈与税が非課税となる制度もあるので、こうしたことが可能かどうかも改めて検討してみましょう。

  • モデルルームで手に入るお得情報もある

    自分でライフプラン表を作った人も、実際に住宅購入を決断する際にはファイナンシャルプランナーに相談して正確な内容にアップデートしてもらうと安心です。物価上昇や運用利回りを考慮した数字を作ってもらえますし、資金が足りない場合の対策も専門的な立場からアドバイスしてもらえます。
    分譲マンションの販売センターや、住宅メーカーのショールームなどで、専門家を紹介してくれるケースもあるので、積極的に利用してみてはいかがでしょうか。一般的には知られていない自治体からの補助金や助成金などの最新情報を教えてもらえたり、予算面での相談にも親身に乗ってもらえます。手が届かないとすぐにあきらめずに気軽に足を運び、相談してみましょう。

  • 理想の住まいを手に入れるために

    一生を共にする住まい選びは、事前に決めた予算だけで決断できるものではありません。ライフプランや、資金計画を立てることで、理想の住宅を手に入れるための準備をすることが大切です。
    資金計画は貯蓄や節約につながるだけでなく、夢を実現させたり、将来のお金に対する不安を解消したりする効果があります。どんなときでも自分らしくいられる住まい。変化するライフステージに寄り添い続けてくれる住まいは、住む人々の人生をより豊かに彩ってくれるはずです。夢を叶えるために、今からできることを始めてみましょう。

森田悦子(もりたえつこ)
ファイナンシャルプランナー/フリーランス記者
石川県生まれ。金沢大学法学部を卒業後、地方新聞記者、編集プロダクションを経て独立。主な執筆分野は資産運用、年金、社会保障、金融経済、ビジネス。新聞、雑誌、ウェブメディアなどで取材記事やインタビュー、コラム、ルポルタージュを寄稿。著書に『知っている人だけが得をする 定年前後のお金の選択』(青春出版社)。日本FP協会認定AFP。