バウスマガジン
2025.04.25
自分らしく
「心ひろがる世界に住もう。」をコンセプトに、全国で30店舗以上を展開しているインテリアブランド「リビングハウス」。
自社のオリジナル家具をはじめ、ドイツ・ミュンヘン発祥の「KARE(カレ)」などヨーロッパの個性的なデザイン家具を数多く取り扱い、ファンを増やしています。
ブランドプロデューサーとしてリビングハウスの成長を支える伊藤彩さんは、2人のお子さんの成長とも向き合いながら、日々、「自分らしさ」のアンテナを磨いています。
——ブランドプロデューサーとして活躍されている伊藤さんですが、具体的にはどのようなお仕事をされているのですか?
やや抽象的な表現になってしまうのですが、リビングハウスのブランド価値を整理したり、「日本を『空間時間価値』先進国へ」という弊社のミッションを、各部門がどのように体現していくかを一緒に考えたりしています。
また、お客様とのタッチポイントである店舗やオンラインショップ、カタログ、イベントなどを俯瞰的にとらえて、ブランドをより魅力的に伝えるにはどのような体験が必要かを設定し、それぞれの軸で発信力を強めていくといったことを担当しています。
——あらゆる要素がブランド価値の形成につながるので、業務の内容も関わり方も幅広いですね。
私たちが届けたいのは、家具という「モノ」ではなくて、そこから広がる暮らしのスタイルや空間、そこで生まれる時間です。
だからこそ、お客様へのヒアリングをとても重視していて、「心地よい暮らし」のイメージをおうかがいし、コーディネートを提案するようにしています。
——伊藤さんご自身は、もともとインテリアに興味があったのですか?
そうですね。インテリアや空間演出に興味はありました。でも、大学時代にカフェ系とインテリア系のどちらを仕事にしようか迷っていた時期があったんです。
環境を変えて考えたくて、カナダへワーキングホリデーに行ったのですが、そこでカナダの人たちのライフスタイルに刺激を受けました。
皆さん、お天気が良いと平日でも近所のビーチにチェアを持ち出して、のんびり過ごしているんです。
その姿に、「日常を楽しむという心のゆとりは、人生を通じて持っていたいな」と感じ、日々の暮らしに欠かせないインテリアの道を選びました。
実は私、都内のリビングハウス店舗でコーディネーターとして、販売業務をやっていた時期もあるんです。
その頃から、お客様への提案力はリビングハウスの価値であり強みだという意識はありました。
まだまだ道半ばではありますが、大阪で家具のセレクトショップとしてスタートした弊社が、オリジナルのデザイン家具を手がけるようになり、関東でも店舗を展開し、「リビングハウス、行ったことあるよ!」というお声をいただくようになって、「ここまできたんだなあ……」と、涙が出そうになります。
——リビングハウスでの経験を経て、「空間づくり」に対する伊藤さんご自身の意識の変化などは起きました?
私は新卒で入社して15年以上経ちますが、その間に結婚や出産というライフイベントがありました。
もちろん、ライフスタイルも変化していくわけですが、それによって「心地よい空間」の意味が変わっていったなと思います。
例えば、ひとり暮らしのときは自分の好きなものに囲まれる楽しさだったけれど、結婚すれば「夫婦が快適な空間」を一緒に考えるようになります。
我が家は自分たちでリノベーションをしていまして、夫も同業種なのでお互いの主張が激しくて大変でした(笑)。
壁紙からタイルの色に至るまで意見がぶつかり、頑張って話し合いで中間地点を探る感じでしたね。でも結果的には楽しかったです!
子どもが2人生まれてからは、「子どもにとって良い環境ってなんだろう?」とか、「宿題をしやすい空間、子どもが主体的に片付けできる空間とは?」といった視点で考えるようになりました。
こうした経験や新たな視点は、リビングハウスのブランド価値を発信していく際にも、役立っているかなと思います。
——インテリア好きのお客様もいるとは思いますが、逆に「自分の理想イメージが浮かばない」「理想はあるけれど、イメージどおりの空間になるか自信がない」といった相談はありますか?
家具はあまり頻繁に買うものではないですし、そういった方のほうが一般的かもしれませんね。
私たちは、ブランドコンセプト「心ひろがる世界に住もう。」を体現する手段のひとつとして、「未知案内」という言葉を用いています。
そこには、「お客様自身が気づいていない願望や、まだ知らない心地よさに出逢うという体験を提供するのも、プロとしての役割である」という考えが込められています。
例えるなら、美容師さんに「なんとなく気分を変えたくて」とオーダーしたら、思ってもみなかった髪型を提案してくれて、「私ってこんなスタイルもいけるんだ!」と嬉しくなる感じ。
リビングハウスの店舗には、モダンや北欧、ナチュラル系、アンティーク&ヴィンテージ調とさまざまなテイストがあるので、宝探しをしているようなワクワク感を楽しんでもらえたらと思います。
——インテリアの知識がなくても、安心して「未知」を楽しめそうですね。
お客様によって「嬉しい未知」が何かは異なるので、そこは私たちがナビゲートできればと。
店舗には、お客様が理想とする空間づくりのお手伝いをする「空間時間デザイナー」がいますので、お部屋の図面に合わせて3Dシミュレーションを作成したり、メジャーで測りながら実際に空間を再現して「テレビからソファーまでの距離は、このくらいですよ」とご説明したりしています。
——伊藤さんがご自宅のなかで特にこだわっている空間があれば、教えてください。
私は料理するのも、友人を招いて食事をするのも好きなので、キッチンにこだわっています。
キッチンテーブルは夫と二人暮らしのときから、大きいサイズのものを使っています。
また、春夏秋冬を楽しみたいので、子どもと一緒におせち料理を作ったり、旬のものを食べたりと、季節ごとのイベントも大切にしています。
もちろん、ガッツリ手を抜くときもありますよ(笑)。でも、私のなかに「今しかできない、家族という名の巣づくり」みたいな感覚があって、それを楽しめる場として、大きなテーブルを選んでいるのかもしれません。
自分が子どもの頃の思い出って、家族と過ごした空間とセットだった印象があるので、余計にそう感じるのだと思います。
——すてきですね。お話を聞いていても、伊藤さんの「自分らしさ」ってしっかり具現化されているなと感じます。
いやあ、私としてはそんなに意識していないですよ?(笑)
……でも強いて言うなら、自分の「好き」と「嫌なもの」に対するアンテナは立てるようにしています。
とにかくいつでも、アンテナに触れたものがあると、すぐに写真を撮っていますね。
街中を歩いていても「なんかいいな」と思ったらスマートフォンで撮影して、あとで「なぜ好きなんだろう?/どんなところが好きなのだろう?」と、見直しています。
「嫌だな」と感じたことも、そうやって見直すことで、「じゃあ、この状況を再現しないようにしよう」と対処ができるので。
——伊藤さんの感情の「アンテナ」は、どのくらいの頃から実践されていたんですか?
たぶん、小学生くらいから自然とやっていたと思います。当時はデジタルカメラもスマートフォンもないので、紙に書いていました。
具体的には「ひとり暮らししたら買う物リスト」とか、そんなレベルだったと思いますが(笑)。
——小学生でひとり暮らしを想像していたのは、すごいですね(笑)。日頃からアンテナを立てるトレーニングは、「心地よい空間づくり」に関しても応用できそうです。
リビングハウスの店舗に来てもらって、実際にいろいろなテイストを見てもらうのが一番ですが、カフェやホテルのロビーなど「この雰囲気が好きだな、落ち着くな」と感じたら、それを写真に撮っておいて「空間時間デザイナー」に伝えていただけると、ヒントになると思います。
まずはそれと似たテイストから、「もしかしてこういうのも好きですか?」と探っていきますし、それが「ノー」でもまったく問題ありません。「好きじゃない」があるなら、「好き」もあるはずですから。
そうやって「未知」の輪郭を固めていけば、段々と理想の空間づくりのイメージが見えてきますよ。
——最後に、伊藤さんにとっての「自分らしい空間づくり」を教えてください。
結婚してからの約10年を改めて振り返ってみると、自分らしさを維持するためにアップデートを続けているのは「収納」かなと思います。
私にとって、「やりたいことを/やりたいときに/気持ちよくやれる」のはとても大切なことで、料理ならいつでも作れるよう食材を常にストックしておくし、キャンプやピクニックなら「明日、行くよ!」と言われても、すぐに行けるくらいの準備をしてあります。備品の買い出し不要です(笑)。
紙コップなどの消耗品は、キャンプの翌週にはもう補充しに買いに行くほど。
防災用品にもなるし、何より「新鮮な気持ちのうちに、次の準備をしておこう!」という気持ちになるので。
たぶん「やりたいことをやれる環境」を整えて、スタンバイしておくのが好きなのだと思います。
そのためにも、ごちゃごちゃしがちな場所の収納を定期的に見直して、アップデートをかけています。
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東京都・南青山のリビングハウス本社で行われた今回の取材、オフィスで働く皆さんは、こちらに気づくと明るくあいさつをしてくださり、爽やかなパワーに溢れていました。なかでも伊藤さんは、不思議な吸引力を持っていて、取材スタッフもその魅力に惹きつけられました。
ご自身のライフステージに合わせて、「心地よい空間」のかたちを変えてきた伊藤さん。きっとこれからも、しなやかに、アクティブに活躍されていくのだと思います。
※BAUSでは、リビングハウスとの提携により、オーナー様に向けたご優待サービスを提供しています。